エスノグラフィーとは観察の記録のことですが、この本はエチオピアで2003年から2012年まで行われたJICAの「参加型森林管理プロジェクト」を観察して記録した、プロジェクト・エスノグラフィーです。日本人専門家やエチオピア人カウンターパート、JICAの本部と現地事務所の担当者などが経験した、夢、困難、議論、喜びなどがストーリー仕立てで、詳しく解説されています。一般的な開発関係の専門書と違い、比較的平易な表現で書かれていることと、プロジェクトの内部に焦点が当てられていることが特徴です。
コーヒー発祥の地であるエチオピア南部には、今でも野生のコーヒーノキの群生を擁す原生林が広がっています。資源としてのそれら森と野生のコーヒーノキの重要性はもちろんですが、同時にそこに住む人々のことも忘れてはなりません。森林保全と人々の生活の安定の両方を目指したプロジェクトは、それだけでも最初からハードルの高いことが分かります。プロジェクトのカバーした分野は、生態系、林業、普及、住民組織、市場ブランド化まで広く、やり取りをした相手は農民から日本の輸入業まで多肢にわたります。
アフリカでの開発に関心のある学生から一般の方まで、広く読まれて良い本でしょう。