空から降ってきた男

41Ap6NLCMCL._SX337_BO1,204,203,200_空から降ってきた男:アフリカ「奴隷社会」の悲劇
小倉孝保
新潮社
2016年

アンゴラ発ロンドン行きの飛行機から落下死したモザンビーク人男性のストーリー。
ヨーロッパに住む恋人の元に向かうため飛行機の車輪格納庫に潜み、ロンドン着陸寸前に落下死してしまった男性の、そこに至るストーリーをロンドン駐在のジャーナリストがまとめたものです。スイスに住む元恋人や、男性の故郷の親族などに取材をしています。

恋人の元へ向かうという動機は私たちにもわかる気持ちですが、経済や文化的な背景には、私たちと共通するものもあれば、アフリカやモザンビークに特有のものもあるように思います。(物質的な)豊かさに触れて初めて貧困の厳しさが身に染みることは、日本でも程度の差こそあれありますが、お金が問題を解決するという暗黙の制度は、アフリカの多くの国でその浸透度の深さが日本の比ではありません。それはつまり、お金がなければ何もできない、多くの低所得層にとっては貧困から抜け出すことがままならないということです。農村生まれのおとなしい主人公の男性が南アフリカ大富豪家族の暮らしに出会い、そこのヨーロッパ人妻と親密になってしまったことは、貧困から抜け出す大きなチャンスだったわけですが、元恋人はヨーロッパの母親に助けを求め、男性は結局どこかで歯車が狂い、ロンドンの住宅街の路上に落ちて死んでしまう。自らの判断を誤ってしまったのか、それとも富豪の暮らしや元恋人に人生を狂わされてしまったのか、悲しいストーリーです。

開発に関わる人は、こうした状況を作り出す影響力を常に持っていると思いますし、援助とか支援を考える材料になると思います。

広告

Farmer Research groups: Institutionalizing participatory agricultural research in Ethiopia

51PvS+k7JuL

Farmer Research groups: Institutionalizing participatory agricultural research in Ethiopia

Dawit Alemu, Yoshiaki Nishikawa, Kiyoshi Shiratori, Taku Seo
Practical Actions Publishing Ltd
2016年

英語でちょっと固い内容の本ですが、アフリカの農業開発現場のことが書かれているので紹介します。

JICAが実施したエチオピアでの参加型農業研究の取り組みが本になりました。

参加型農業研究は、それまでの先進国の技術を途上国に移転すること・研究所における研究成果をそのまま普及しようとすることから起こる様々な問題の認識から、1980年代90年代に多くの研究がなされました。その大部分は、農民をどのように研究に参加してもらうかというものでした。その後、参加型研究の関係者にとってのメリットの実証研究は下火となり、援助業界のトレンドの変化もあって、いま農民の研究への参加は権利に基づくものやネットワーク・イノヴェーションの観点の議論が盛んになっています。そのような背景の中で、エチオピア農業研究機構はJICAとともに、2004年から2015年まで、農民研究グループ(FRG)アプローチの制度化に取り組むプロジェクトを実施しました。農家や普及員が研究に参加することによって、研究普及の効率が向上するという言説を踏襲するのではなく、そもそも研究者が参加型研究に参加することの意味とその際に必要な技能や態度についてプロジェクトマネジメントに関わった関係者とともに、実際に研究を実施した若手研究員自身による記述を行っています。トップダウンの傾向の強いエチオピアで、研究機関のマネジメントが参加型農業研究の重要性に気づきこれを制度化しようとした経緯、具体的に成功した事例だけでなく、失敗事例や研究機関・研究員のキャパシティの課題、なによりも外部からの援助による制度化の難しさも描かれてています。

開発現場で働く開発ワーカーや研究者、あるいは将来開発分野で働くことを目指す学生の方たちの参考となるでしょう。

ハードカバー版がとてつもなく高いですが、キンドル版が安価です。