絵はがきにされた少年

藤原章生(著)
集英社 (2005, 2010, 2020)

大手新聞社のアフリカ特派員が綴った短編集。インタビューした一人一人の体験を聞き取りながら、様々なアフリカ人、社会、歴史的な出来事がが語られています。また、一人一人の人生や考え方に触れることで、記者としての、あるいは外部者としてのものの見方や、記者としての伝え方を深く考えるようになるところは、現地社会や人々を尊重する筆者の気持ちが伝わってくる、文章です。「ハゲワシと少女」の写真を撮ったカメラマンの死、フツとツチの対立と和解、スワジランドの王様、今後のダイヤモンド、アパルトヘイトなど、興味深い話題を、個人の経験を通して見ると、また違った一般論として理解していたそれぞれの課題の違う一面が見えてくる。まず、一人一人を知ることから始めて、一般論はそのあとでよいと筆者は語り掛ける。

長く滞在して人間関係を作らなければ聞けない話が興味深い。一般的なアフリカ書では触れられない、アフリカの市井の人たちのとても興味深い人生に触れてみたい人、自分の経験したアフリカをどう伝えたらよいか悩んでいる人には、差参考になる一冊だろう。

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ビアフラ戦争:叢林に消えた共和国

室井 義雄(著)
山川出版社 (2003)

ナイジェリアで起き、当時「飢餓」の代名詞ともなったビアフラ独立戦争が終結して50年が経つ。この戦争は1967年、部族間・地域間の対立が背景となって、イボ人が多数派を占める東部の州が「ビアフラ共和国」として独立宣言したことに端を発する。その後、ビアフラ内は経済封鎖によって食料供給が止まり、飢えた子どもたちの映像がテレビを通じて世界中に報道された。
 各国では反戦意識が高まった。ジョン・レノンは抗議の意で英国勲章を返上し、米国コロンビア大の学生ブルース・メイロックが国連本部前で、パリの路上ではフランシーヌ・ルコントが、ビアフラの飢餓に抗議して焼身自殺した。新谷のり子が歌った「フランシーヌの場合」は彼女の死に触発されて作られた歌だ。約200万人が飢餓で命を落とし、ビアフラが降伏したことで戦争は70年に終結した。
 本書は、ビアフラ共和国独立前夜から、終戦までの主に軍人や政治家たちの動き、また諸外国の思惑と介入を克明に追ったものだ。植民地時代の歴史が、この戦争を長引かせてしまった原因でもあるという。
 ビアフラの独立を求める人々が今もいる。

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酒を食べる:エチオピア・デラシャを事例として

砂野 唯(著)
昭和堂 (2019)

酒を食べるエチオピア南部に住むデラシャという人たちのお話。もう少し正確に言うと、酒を主食にしている人たちのことを書いた本です。

文字通り、毎日5キロもの濁り酒を、農閑期には15回、農繁期には20回以上に分けて「食べる」。つまり、食事として摂る。朝起きてゴクリ、畑に出かける時にペットボトルやヒョウタンの容器に入れて家を後にし、仕事の合間にゴクリ、畑に行く道すがらにもゴクゴク、お昼にゴクゴク、帰宅してゴクゴク、寝る前にゴクゴク。一日に4から5時間がこの濁り酒を飲む時間に費やされるそうです。

エチオピアやその他の国々の発酵食品とそれらの栄養価についても説明されていて、食べ物としての酒の歴史と文化を知ることもできます。本当に目からうろこ、なあるほど、ええっ、が連続する本です。

どちらかというと専門書っぽい内容なので、できれば一般向けに、すらすら読める本を書いてほしいなと思いました。たくさんの人たちに知ってほしいです。デラシャの人たちの暮らしと文化を知ると、価値観変わりますよ・・・たぶん。

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奴隷になったイギリス人の物語:イスラムにとらわれた100万人の白人奴隷

奴隷になったイギリス人の物語:イスラムにとらわれた100万人の白人奴隷

ジャイルズ・ミルトン(著)、仙名紀 (訳)
アスペクト (2006)

ちょっと過激な、18世紀のマグレブにいた白人奴隷の話です。

トーマス・ペローという、11歳で叔父と貿易船に乗って航海に出た少年が、地中海で海賊につかまったのが1715年。その後の23年間をモロッコで奴隷として生きたペローを軸に、当時、数万人の白人奴隷の話の数々が記された、物語風のフィクションです。

内容は、白人中心に描かれ、脚色しすぎじゃないかと思われるくらい、スルタンの残虐さの数々が随所にあります。フェズやメクネスには、黒人奴隷もたくさんいたはずですが、彼らの描写はほとんどありません。スルタンの傍らで警備して、時にスルタンの命で処刑を執行していた黒人警備隊の話は頻繁に出てきます。メクネスのスルタンが、モーリタニアを超えてセネガル川あたりまで影響力を持とうとしていた様子も記されています。

モロッコを訪れる人はこんな本も読んでおくと、世界遺産でもあるメクネス塀や宮殿を見学するときに、歴史の中で起こったことやそこで生きていた人たちの様子に想像を広げることができるのではないでしょうか。

ペロー少年はスルタンの元で成長し、奴隷のままではありますが、兵隊を率いる隊長にまで出世します。そして数々の修羅場を乗り越えて、最後は・・・。

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チョンキンマンションのボスは知っている

「チョンキンマンションのボスは知っている」
春秋社
小川さやか 著

このタイトルだけで、いったいどれほどの人たちの心をつかむだろうか?

人類学者が、香港のタンザニア人コミュニティの中に身を置き、その一部になることで観たこと、経験したこと、考えた人生のことなどが生き生きと描かれている。

香港のタンザニア人コミュニティーを維持している「シェアリング経済」や相互扶助組合、ICTを使った本国との取引のしくみと、それらの合間を埋めている、お互いの人生に深く踏み入らないながらも、排除もしない価値観やコミュニティの在り方は、面白く、読んでいてなるほどと感心し、最後にはこんな人生面白そうだなという気持ちになって、こんな社会に身を置いたら安心かもという気にもなってくる。

”おわりに”で筆者が「私たちは必ずしも『危険な他者』や『異質な他者』を排除しなくてもシェアができるということを考える一歩になれば、うれしく思う」と述べている。私たちがこれからどのような社会で生きていこうとしているのかを考える、その助けになる一冊だろう。

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アフリカのことわざ

深い!
「アフリカのことわざ」
アフリカのことわざ研究会
東邦出版

人生、仕事、愛、道理についての、「なるほどー」と思うことわざの数々。

あなたの人生が豊かになること間違いなし。

続編が待ち望まれます。

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アフリカンプリント:京都で生まれた布物語

「アフリカンプリント:京都で生まれた布物語」
青幻舎

並木 誠士・青木 美保子 著
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 監修

IMG_20190713_075016カラフルな布がアフリカの日常を彩っている。そんな布が一時期、アフリカから遠く離れた日本の京都で生産されていた。生産を担っていた企業のひとつ「大同マルタ染工」に残っていた資料と、当時を知る人たちへのインタビューで構成され、鮮やかで特徴のある文様をたくさんの写真で楽しむことの出来る本です。また、今ではアフリカを特徴づけるものの代表といえるアフリカンプリントがどのように生まれて、アフリカの人々の間に浸透していったのかという歴史を知ることも出来ます。ここにも、アフリカと日本をつなぐ過去の歴史が刻まれています。

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ストリートの精霊たち

「ストリートの精霊たち」
世界思想社

川瀬 慈 著

文化人類学者の筆者が、エチオピアの古都ゴンダールで出会った人々、主にアズマリと呼ばれる弦楽器を弾き語る楽師、宿泊するホテルの部屋に出入りする若者たちなどとの生のやり取り、筆者の感じたことが正直に綴られている。小説のような詩のような、あるいは日記のような内容なので、読者は誰でも、筆者のゴンダールのストリートでの日々を追体験することが出来る。論文ではないから感じられることがあるなと思います。

「ゴンダールのストリート、それは歌い、踊り、怒り、さまよい、嗚咽するのです。」

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牛とともに耕す:エチオピアにおける在来型犂農耕の未来可能性

「牛とともに耕す:エチオピアにおける在来型犂農耕の未来可能性」
京都大学アフリカ地域研究資料センター

田中利和 著

エチオピアは牛耕の国。牛を使って畑を耕すなんて遅れているって考えていませんか?実は牛耕はエチオピアの農業とは相性の良い、とても良く考えられた技術なのです。だから牛耕で何千年ものあいだ、人々を養ってこれたのです。
そんな牛耕について、この本にはなぜそうなのかが書かれています。博士論文をベースにしているので少々専門的な内容ですが、アフリカ理解プロジェクトもエチオピアで活動し、筆者から話を聞いたり、実際に研究している村を案内してもらったりしたので、あえて紹介させてもらいます。少し固いのを我慢してこの本を読むと、エチオピアでどんな農業がおこなわれているのかを知ることが出来ます。筆者は研究対象としたエチオピア中部のオロモ語を話す地域の村に何度も住み込み、農作業を見たり、実際に牛耕作業を自ら経験したり、下宿先の「エチオピアの兄弟分やの親たち」から話を聞いて得た情報をもとにまとめられており、話はリアルです。

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京都大学アフリカ研究シリーズは、面白い本がそろっています。

マッドジャーマンズ:ドイツ移民物語

「マッドジャーマンズ:ドイツ移民物語」
花伝社
ビルギット・ヴァイエ 著
山口侑紀 訳

まだドイツが東西に分かれていた頃、独立したばかりのアフリカ大陸では社会主義を掲げる国が多かった。1975年にポルトガルから独立したモザンビークもその一つで、1979年に東ドイツ(社会主義の方のドイツ)と協定を結び、契約労働者を送り込み始めた。1991年に東西ドイツが統一されるまでの間に約2万人の労働者が東ドイツに渡った。この本(漫画です)は、そうした東ドイツのモザンビーク人労働者への取材をもとに創作された3人のモザンビーク人男女を主人公にしています。社会主義、移民、差別、故郷、家族、恋愛、独立後紛争、国家の裏切り、アイデンティティーなどをめぐる3人の交差しながら展開するそれぞれの人生がつづられています。フィクションですが、本の中で語られる多くの出来事は、実際にモザンビーク人労働者の身に起こったことです。著者はドイツ人ですが、物語はモザンビーク人の視点で書かれています。また、その時代と背景は違っていても、考えや想いには現代の移民たちと共通するものがあるのではないでしょうか。

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