牛とともに耕す:エチオピアにおける在来型犂農耕の未来可能性

「牛とともに耕す:エチオピアにおける在来型犂農耕の未来可能性」
京都大学アフリカ地域研究資料センター

田中利和 著

エチオピアは牛耕の国。牛を使って畑を耕すなんて遅れているって考えていませんか?実は牛耕はエチオピアの農業とは相性の良い、とても良く考えられた技術なのです。だから牛耕で何千年ものあいだ、人々を養ってこれたのです。
そんな牛耕について、この本にはなぜそうなのかが書かれています。博士論文をベースにしているので少々専門的な内容ですが、アフリカ理解プロジェクトもエチオピアで活動し、筆者から話を聞いたり、実際に研究している村を案内してもらったりしたので、あえて紹介させてもらいます。少し固いのを我慢してこの本を読むと、エチオピアでどんな農業がおこなわれているのかを知ることが出来ます。筆者は研究対象としたエチオピア中部のオロモ語を話す地域の村に何度も住み込み、農作業を見たり、実際に牛耕作業を自ら経験したり、下宿先の「エチオピアの兄弟分やの親たち」から話を聞いて得た情報をもとにまとめられており、話はリアルです。

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京都大学アフリカ研究シリーズは、面白い本がそろっています。

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マッドジャーマンズ:ドイツ移民物語

「マッドジャーマンズ:ドイツ移民物語」
花伝社
ビルギット・ヴァイエ 著
山口侑紀 訳

まだドイツが東西に分かれていた頃、独立したばかりのアフリカ大陸では社会主義を掲げる国が多かった。1975年にポルトガルから独立したモザンビークもその一つで、1979年に東ドイツ(社会主義の方のドイツ)と協定を結び、契約労働者を送り込み始めた。1991年に東西ドイツが統一されるまでの間に約2万人の労働者が東ドイツに渡った。この本(漫画です)は、そうした東ドイツのモザンビーク人労働者への取材をもとに創作された3人のモザンビーク人男女を主人公にしています。社会主義、移民、差別、故郷、家族、恋愛、独立後紛争、国家の裏切り、アイデンティティーなどをめぐる3人の交差しながら展開するそれぞれの人生がつづられています。フィクションですが、本の中で語られる多くの出来事は、実際にモザンビーク人労働者の身に起こったことです。著者はドイツ人ですが、物語はモザンビーク人の視点で書かれています。また、その時代と背景は違っていても、考えや想いには現代の移民たちと共通するものがあるのではないでしょうか。

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トレバー・ノア:生まれたことが犯罪!?

「トレバー・ノア:生まれたことが犯罪!?」英治出版
トレバ―・ノア(Trevor Noah)著
齋藤慎子 訳

これは母の愛の詰まった本です。そして、アパルトヘイト廃止前後の南アフリカの社会を、黒人でも白人でもない「カラード」の(でも、黒人社会の中で育った)著者の目から語られている本です。トレバ―・ノアはアメリカのTV番組「A Daily Show with Trevor Noah」という政治風刺で人気を博す番組の司会を務めるコメディアン(しかもシリアスで鋭い)。本は南アフリカでの彼と母親の暮しを中心に、彼の出生の背景(コサの母親とドイツ系スイス人の父親)、言葉と宗教と社会、黒人の毎日の暮しなどが、父親や親戚や友人とのさまざまなを通じてとても面白く描かれています。2センチくらいの厚い400ページの本ですが、一気に楽しく読めました。そして、南アフリカの今まで分からなかったことを知ることが出来ました。名誉白人という不名誉なタイトルを一時期保持していた日本に関係することも、ほんの少しだけですが書かれています。

6年前から米国に住むトレバ―・ノアは、現在大ヒット中の映画「ブラックパンサー」にコンピューターの声で登場しています。また、彼は最近「The Donald J. Trump Presidential Tweet Library」という、トランプ大統領のツィート集も出しました。

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バッタを倒しにアフリカへ

「バッタを倒しにアフリカへ」光文社新書
前野ウルド浩太郎 著

バッタに食われたいという夢を実現するためにバッタ研究者になり、サバクトビバッタの聖地サハラ砂漠に飛んだバッタ博士のフィールド記。モーリタニアでの研究所での暮らし、研究者をはじめ日々の暮らしで接した人たちのこと、そしてバッタのことなどを著者の持ち前のユニークな視点とユーモアたっぷりの文章で綴られています。バッタの本という割に中身はなかなか現れてくれないバッタを探し求めた奮闘の日々や著者の心もようが主体です。サバクトビバッタのことはそんなに書かれていません。もっとバッタのことを知りたい人は、同じ著者の「孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)」がおすすめです。こちらも十分に面白くて笑いが抑えられない本なので、期待は裏切られません。どちらも、モーリタニアという日本にはあまりなじみのない国の一端がわかる本でもあります。

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うしろめたさの人類学

「うしろめたさの人類学」ミシマ社
松村圭一郎 著

構築人類学(*)を提唱する文化人類学者が、研究フィールドのエチオピアでの体験やそこで考えたことなどをベースに、経済って何から始まり、国家と市場とわたしたち個人や社会をつなぐ制度や感情を人類学者の視点で解釈しなおしています。私たちのほとんどは、人と人、人と市場、人と国家などの関係性の中で、それぞれが居場所や役割をみつけて生きています。それぞれが持つそれら境界を引き直す試みをしてみよう、今ある構築された社会を一人一人の見る目や行動で変えていくことをやってみませんか、というメッセージの本だと思いました。本のタイトルにある「うしろめたさ」についての解説や「援助」の章の深さが少し心残りですが、新しい視点を与えてくれる面白くて説得力のある本です。分かりやすいはじまり、途中少し分かり難くなって(ちょっとアカデミックな感じになって)、でも最後はなるほどなあという気持ちになる本です。

*ジェンダーとかストレスなど社会の中にある性質や感情は、様々な作用の中で構築されてきたとされるが、そうした構築された社会を少し違う視点で組みなおしてみよう、そうしたらより良い社会の在り方が見えてくるかもしれない、そんなことを考えるのが構築人類学のようです。

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アフリカ希望の大陸

51wzmh1t7pl-_sx345_bo1204203200_アフリカ希望の大陸:11億人のエネルギーと創造性
ダヨ・オロパデ著、松本裕訳、英治出版

この本は、最初から最後まで、アフリカに存在する数え切れないほどの機会、それを生かす人々の工夫とエネルギーが実例で紹介された、希望に満ちた本である。この本が発信するメッセージは、人々が工夫して作り上げ、社会を動かし、生き抜いていくための、助け合いや時にはインフォーマルな「近道」が、実際には役に立つことが多いということだ。利用できるはずだと思っている公の制度は非効率な政府の副産物で使えないことが多いという。読者がアフリカに興味を持っている人ならば、アフリカへの視野を大きく広げてくれるだろう。もし読者が開発関係者なら、その人たちの目標である「自分たちをお役御免にする」ために、今までうすうす感じていた「非国家的構造や非公式な近道こそ役に立つ」ということに、今一度うなずく本となるのではないだろうか。多くの人々の工夫による希望の実例はすばらしいものばかりだが、必ずしも希望ばかりの現実ではないという批判は、現地の経験がある人なら持つだろう。それでも、見方を変えればこんなに希望に満ちている大陸というメッセージは貴重だ。

空から降ってきた男

41Ap6NLCMCL._SX337_BO1,204,203,200_空から降ってきた男:アフリカ「奴隷社会」の悲劇
小倉孝保
新潮社
2016年

アンゴラ発ロンドン行きの飛行機から落下死したモザンビーク人男性のストーリー。
ヨーロッパに住む恋人の元に向かうため飛行機の車輪格納庫に潜み、ロンドン着陸寸前に落下死してしまった男性の、そこに至るストーリーをロンドン駐在のジャーナリストがまとめたものです。スイスに住む元恋人や、男性の故郷の親族などに取材をしています。

恋人の元へ向かうという動機は私たちにもわかる気持ちですが、経済や文化的な背景には、私たちと共通するものもあれば、アフリカやモザンビークに特有のものもあるように思います。(物質的な)豊かさに触れて初めて貧困の厳しさが身に染みることは、日本でも程度の差こそあれありますが、お金が問題を解決するという暗黙の制度は、アフリカの多くの国でその浸透度の深さが日本の比ではありません。それはつまり、お金がなければ何もできない、多くの低所得層にとっては貧困から抜け出すことがままならないということです。農村生まれのおとなしい主人公の男性が南アフリカ大富豪家族の暮らしに出会い、そこのヨーロッパ人妻と親密になってしまったことは、貧困から抜け出す大きなチャンスだったわけですが、元恋人はヨーロッパの母親に助けを求め、男性は結局どこかで歯車が狂い、ロンドンの住宅街の路上に落ちて死んでしまう。自らの判断を誤ってしまったのか、それとも富豪の暮らしや元恋人に人生を狂わされてしまったのか、悲しいストーリーです。

開発に関わる人は、こうした状況を作り出す影響力を常に持っていると思いますし、援助とか支援を考える材料になると思います。