ボツワナを知るための52章
池谷和信編著 明石書店
336ページ
池谷さんがボツワナ単独の本で52章も書けるのかと心配したというあとがきが印象に残りました。
「研究」の対象とならない、ごく基本的なデータ、歴史、そして日常生活の雰囲気を伝える本、重要だなと思いました。
AJF斎藤
川端正久・落合雄彦編著 晃洋書房 4,725円(税込み) A5判 420p
ベナンの公選市長の積極的な自治体外交を描く「第5章 市長から見た地方分権化時代の政治と世界」を興味深く読みました。
「第6章 ケニアにおける所有、境界および暴力」に、高橋基樹さんの『開発と国家 アフリカ政治経済論序説』後半部での議論をさらに深めていこう という意志を強く感じます。
第6章の末尾に付された以下の註が気になります。
26)アフリカにおける若者の失業と暴力への傾斜の問題については、既に1980年
代から大きな問題となっているが、1990年代以降にはさらに 国際開発の実務
上、また学術研究上、最も喫緊の課題の1つとなっていると言ってよいだろう。
AJF斎藤
アフリカン・ポップスの誘惑
多摩アフリカセンター編 春風社 *2007年
お葬式が出会いの場で、徹夜で踊りまくるという話に、何だか感動しました。最後にエイズで亡くなった人気歌手の「エイズに気をつけろ」という歌の全訳が掲載されているのも買いです。
アフリカの医療・障害・ジェンダー―ナイジェリア社会への新たな複眼的アプローチ
落合 雄彦, 金田 知子編著 晃洋書房 2007年
章構成の前半5章は、ナイジェリアにおける精神医療の状況を紹介。植民地期からの歴史、研究機関/医療機関の現状、サバイバー自身の手記と文化人類学者に よる聴き取りなど、さまざまな視点からのアプローチは、これからの調査/研究の出発点になるだろう。後半5章では、障害者リハビリテーション、ろう者と手 話、感染症問題、リプロダクティブ・ヘルス、フィスチュラ問題を概説。「アフリカ障害者の10年」が進行中なので、もっと障害者自身の取り組みや、障害者 の自立につながる政策、支援活動の紹介がほしかった。
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マウマウの娘―あるケニア人女性の回想
ワンボイ・ワイヤキ・オティエノ著 コーラ・アン・プレスリー編 富永 智津子訳 未来社 2007年
十代でケニア土地解放軍の闘いに参加し、ケニア独立後は政治家としても活躍した女性の自叙伝の前半。後半の翻訳も待たれる。70歳を超えて、ケニア独立の理念を高く掲げた政党を立ち上げた著者から目が離せない。
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開発フロンティアの民族誌―東アフリカ・灌漑計画のなかに生きる人びと
石井 洋子著 御茶の水書房 2007年
サブサハラ・アフリカで最も成功したと言われてきた国家的潅漑計画の歴史と、1990年代末から始まった新しい動きを伝える標記の本を興味深く読みまし た。農民組合によるコメの集荷・販売に対する弾圧によって、個々の農家がどのようにしてコメを販売しているのかを伝える第3部は、八郎潟を埋め立てて誕生 した大潟村に入植した人びとの減反反対闘争、自主販売の取り組みを思い浮かべさせました。
現代アフリカと開発経済学
峯陽一著 日本評論社 1999年11月
英領カリブ海植民地出身で独学で経済学を学び独立したガーナの経済顧問とな ったルイス、ナチス・ドイツのユダヤ人抹殺プログラムを逃れた経験を背景に ナリジェリアの鉄道衰退を分析して退出モデルを提起したハーシュマン、そし て1943年英国支配下のインドで起きたベンガル大飢饉(300万人が餓死)を原 体験として1970年代のエチオピア、サヘル地域の飢饉を分析したアマルティア ・センという3人の「開発経済学者」の仕事を紹介しながら、開発の主体は誰 かを問いかける本。経済学入門者のための雑誌「経済セミナー」の連載をまと めたものなので、特別な予備知識を前提としていません。
栗本英世著 世界思想社
著者は、1976年、文化人類学を学ぶ大学院生としてスーダン南部での調査を開 始しました。その後2年間、パリの人々の村に住み込み村の同世代集団の一員 として暮らしているうちに、著者が調査を開始した頃は成立していた南北和平 が崩れ、スーダン南部は再度、内戦の舞台となりました。著者は調査地を離れ るましたが、パリの同世代集団の仲間たちとはおりおり連絡をとっていまし た。彼らは、積極的に銃を取ってパリの村を離れ内戦に参加していったそうで す。彼らの銃を取るという選択は何に基づいているのか、何を目指したものな のか、を問いかけてきた記録がこの本です。連絡を取り合った友人たちの死に あたって著者がしたためた弔辞をも収録した「異色の研究書」です。
アフリカの「小さな国」―コートジヴォワールで暮らした12カ月
大林公子著 集英社 2002年8月
研究者を選んだ夫と一緒に旧ザイール、ブルンジで暮らし、子育てもした著者 が、1999年から2000年にかけて12ヶ月を過ごしたコートジヴォワールからホー ムページを通して発信していた記録をまとめた新書。食材やソースのメモなど 食べ物に関する記述も多く、読んでいるといろいろと食べたくなってきます (アフリカンキッチンとあわせて読んでみて下さい)。著者がコートジヴォワ ール滞在中に経験したクーデターの記録にも臨場感を感じます。