この物語の語り手は、リベリアに住む12歳の少年ビライマ。孤児になってしまったため肉親のおばさんのもとへ向かう途中、ゲリラにスカウトされて少年兵となる。
「リベリアとシエラレオネで、ぼくは罪のないひとをおおぜいぶっ殺しちまった。部族戦争をやらかす子ども兵だった。きついドラッグで、ばりばりドラッグ漬 けになってたんだ。」
独裁政権、繰り返される戦争と残虐行為、その中で落とされていく罪のない命…。ビライマ少年の口調がひょうひょうとしており、時にユーモラスでさえあることが、かえって戦争の不条理を際立たせている。
「何人かの追いはぎどもがその国を山分けしてる(…) 領土も山分け、住民も山分け、なんでもかんでも追いはぎどもが山分けしてるっていうのに、そんなやりたいほうだいを世界じゅうがほったらかしにしてるのさ。連中が罪のないひとや子どもや女を好き勝手にぶっ殺すのをほったらかしにしてるのさ」
マリンケ語を交えた独特なリズムと容赦なく効いたアイロニーは、コートジボアール出身の鬼才クルマならでは。また、西アフリカの戦争をよく知らない私たち日本の読者にとっては、訳者による詳細な訳注と巻末の解説が理解を助けてくれる。